「医療有害事象・対応指針」
真実説明に基づく安全文化のために
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※指針の見直し
医療安全は日々進歩していることから、本指針については必要に応じ検討および見直しを行うこととする。

Ⅹ.有害事象の分析

1.有害事象の分析方法としては、現場で起きるインシデント・アクシデント事例に対して、個人の医療者の責任追及ではなく、有害事象が起こった背景となるシステムやプロセスに焦点をあて、一連のシステムの問題点を見出し、対策を実施する上で再発を防止する根本原因分析法(以下:RCA*後述)が有効である。
今後の教訓に生かされるニアミス事例も含め、適切な原因分析を行った上で現場へフィードバックすべきである。
有害事象により致命的かつ重大な健康被害を及ぼした事例や治療行為に付随した重大な過誤は、優先的に分析され早急に改善策を講じなければならない。

2.病院の安全管理部門は、有害事象の調査を実施または指揮し、調査過程が中立性、透明性を保ちつつ行われているか常に注意を払い、必要に応じて院内調査委員会を組織し、外部評価委員の招聘、事故調査委員会への届出を行う(医療安全調査委員会については、2008年6月現在、厚生労働省の検討委員会において法制化を含めた検討がなされている)。
調査委員会における議論においては、有害事象の当事者を含め、評価委員の相互評価(ピアレビュー)内容の機密の保護を確保すべきである。

3.医療者に関する規則には、原因分析に参画する医師や医療提供者間の相互評価の保護について盛り込み、また病院の管理者および安全管理部門は、組織としての学習を促進するために、調査過程の機密性とピアレビューの順守、根本原因分析の要請や実施を奨励すべきである。

4.院内調査委員会の構成は、上級スタッフをはじめとする複数の職種による委員によって推進されるべきであり、委員は当該有害事象に直接関与しておらず、罰則を課すことを前提としない、協力的な態度で、客観的に議論を進めていく人で構成する。
医療安全管理部門、医療の質を改善する部門や臨床部門のリーダーはすべて、この役割を遂行できるように訓練されていなければならない。
また、外部の評価委員として各専門分野に応じた専門家、システム分析の専門家なども、組織として、有害事象の状況を徹底して理解し、分析するために必要な場合がある。

5.院内調査委員会における有害事象原因分析の参加者には、有害事象に関与した医師やその他のスタッフを含むべきである。
有害事象に関与した者はすべて、有害事象の要因を考える上で、できるだけ多様な観点からの情報を共有しなければならないことから、管理者や部局長等、それぞれの責任を負う人々を含む指導者も、適切な改善策が最後まで遂行されることを確実にするために参加しなければならない。

6.医療安全は進化していくものであり、最善の分析戦略と分析技術は時とともに変化することから組織は有害事象の分析と介入の基本設計に関して最善の利用可能な手法を取り入れるべきである。

7.患者と家族は、原因分析には参加しないが有害事象の事実関係と状況について聴取されるべきであり、院内医療メディエーターなどを通じて継続的に情報提供がなされるという組織の方針を知らされなければならない。

8.深刻な有害事象とすべての原因分析の結果は、組織内で認識が浸透するための重要なステップとして、病院管理部門や医療部門の責任者などに報告されなければならない。

9.医療機関は、原因分析の結果が反映された改善策が実施され、その改善策に関わる関係者に情報のフィードバックがなされることを保証する仕組みを確立する必要がある。
すべての部門が必ずしも説明責任を果たすための良いシステムを持っていないことから、システム的な変更が優先的に受け入れられているか、実際に変更がなされているかについての追跡が行われているか、その変更の有効性に関する評価がなされているのか等について、別の仕組みを確立して確保することが必要である。

10.有害事象分析対応の結果としてなされるシステム変更は、予期せぬマイナス効果をもたらすことも想定されることから、いかなるシステム的な変更も、有効性とともに変更に伴い起こりうる好ましくない影響を監視する計画がなされなければならない。

11.原因分析から得られたデータは、有害事象の類型と傾向を識別し、改善運動の優先順位をつけるために集計され追跡されなければならない。

12.厚生労働省等への事故報告の手続きについては、モデル事業実施地域の施設にあっては、外部調査委員会への資料提供協力を行うこと、また、医療事故事例収集事業に手を挙げ参加している施設にあっては、データの収集が重要であることを認識し事故情報の提出を滞りなく行うべきであり、参加を行っていない施設にあっても、国の事業への参加を積極的に行うことが重要であることから、(財)日本医療機能評価機構への登録を行い事故情報の提出を行うべきである。

※根本原因分析法(RCA:Root Cause Analysis )とは
有害事象や「ヒヤリハット」が発生した後に、有害事象からたどって、
その背後に潜むシステムの問題およびヒューマンファクターを探る
方法であり、 多職種のメンバーが集中討論し原因の同定改善策を
考案し追跡調査することで潜在的な問題を明らかにすることである。
  その原因となる要因を特定するプロセスとして以下のような
特徴があげられる。
 (1)事件に関わるプロセスを知りうる多職種のメンバーによるレビューである
 (2)解析は個人の行動ではなく、主に組織、過程に焦点をあてる
 (3)全てのプロセスが分析され有害事象の要因がわかるまで、何が、何故の質問を繰り返し深く掘 り下げる
 (4)システム、プロセスを変化させることにより、医療行為を改善し有害事象や「ヒヤリハット」 のリスクを減少させる方法を同定する